
技能実習先を飛び出した相手と結婚したい
最終更新日:2025年3月14日 行政書士 勝山 兼年
出会った相手は実習先を飛び出した状態でした!?
令和5年末には:404,556人)が技能実習生として日本に在留しています。殆どが真面目に実習に取組む彼らですが、何らかの事情で技能実習先の寮を飛び出して失踪する者も9,700人以上(令和3年)もなるのです。
彼ら彼女らは、3か月以内に日本を出国すれば何ら法的な違反にはならずにすみます。しかし、3か月を超えて日本に合理的理由もなしに在留することは在留資格取消の対象となり、たとえ在留期限の前であっても在留状況不良となるのです。

技能実習生が辞めて失踪する理由
技能実習生は日本で働いて稼げるとの意識で応募しています。国によって技能実習生に採用されるためには、ブローカーまがいの送出し機関に多額の手数料を支払っているケースもあります。実習先に馴染めないと言って簡単に辞めて帰国することは、稼ぐどころか借金を背負うことになりかねず、実習先を辞めても本国に帰国せず、日本で違法に働くことを選ぶ者がいるのが現状なのです。
- 仕事がきつい
- 農業など力仕事の実習では腰痛などを患う、また、食品工場などは深夜早朝の時間帯での作業のために体調不良になるなど実習を続けられなくなる。
- パワハラやセクハラを受ける
- 女性の実習生に実習先会社の上司や責任者にセクハラや性的行為の強要を受ける場合や、作業が上手くできない事をなじられたり、他者の面前で罵倒されるなど精神的に追い詰められることで実習を続けられなくなる。
- 手取りが少ない
- 寮費や光熱費、食費などの名目で賃金より差し引かれ、手取りの金額が想定より少ないと感じる場合があるようです。借金返済の予定が立たなくなり、手取り額の多い仕事に就こうと実習先を飛び出す。

飛び出した実習生と出会って交際を始めてからのこと
出会ったお相手の在留カードを確認し、説得してください。在留期限内に出国すれば入管法上の処分を受けることなく済みます。その後は、お相手の国を訪問するなどして交際を深めてください。
出会ったお相手の在留期限が間近でしたら、オーバーステイになる前に日本を出国してください。在留資格「技能実習」は実習先を辞めた状態では更新されることはございません。
一方、お相手の在留期限が過ぎてしまっている状態でしたら、出入国在留管理局に出頭することをお勧めします。不法滞在(オーバーステイ)ですが、出頭して本国に帰国する意思を見せれば、通常より軽い「出国命令」の処分がなされます。出頭せずに過ごしているうちに摘発を受けるなどした場合は「退去強制」の処分となります。
「出国命令」は上陸拒否期間1年ですが、「退去強制」では同期間が5年となるのです。
上陸拒否の1年間だけは日本に入国は認められませんが、お相手の国を訪れるなどして交際を深めれば1年経過した後に日本に呼寄せることも可能となるのです。

結婚手続きのタイミング
結婚手続きは在留資格にかかわらず可能です。ただし、市町村役場では本国よりの適正な証明書類の提出が求められます。親族に送ってもらえればよいですが、本国の役所が本人が窓口に来ないと証明書を発行しない場合は日本に在留している状態であれば、手続きを進められないのです。なお、お相手の国の大使館、領事館で証明書を発行してくれる場合もございますが、その者が適正に日本に在留している事の証明を求められますのでそれはそれで難しいのです。
結局、お相手が本国に戻ってから証明書類を揃えてもらうか、日本人がお相手の国を訪れて結婚手続きをするかになるのです。
状況別の結婚手続き3つの方法
お相手外国人は | |
在留期限超過 | 在留期限前 |
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出入国在留管理局に出頭してもらう。 | |
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出国命令の処分を受ける。 | |
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本国に帰国してもらう。 | |
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結婚する。 | |
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在留資格認定証明書交付申請をして日本に呼び寄せる。 |
結婚ビザ申請のポイント
上陸拒否期間を超えて申請する場合でも、通常の申請書類だけでは不十分です。在留状況が不良になったこと、在留期限を超えて日本に在留に至ったことなどの顛末を詳細に記載した書類を提出すなくてはなりません。記載する内容は以下の通りです。
- 実習先を飛び出した理由
- 飛び出した後の滞在先居住地やその名称、同居者の名前
- 飛び出した後の仕事について、仕事の紹介者、仕事の内容、仕事場の名称

実習先を失踪したお相手との結婚手続きからビザ申請事例
- 在留期限間近かのお相手との手続き
日本人女性Nさんは、勤務先工場で半年前から働くインドネシア人男性と交際を深め結婚を考えるようになりました。ところが、インドネシア人は技能実習先を飛び出し、違法に就労していることが判りました。Nさんが説得しインドネシア人は働くのを辞めました。インドネシア人は在留期限間近でしたので、インドネシアに帰国しました。Nさんもお相手にお同行しインドネシアを訪れました。お相手親族に挨拶し、二人の結婚が認められましたので、そのままインドネシアの方式で結婚しました。
日本に戻ったNさんは婚姻届も済ませ、代理人としてインドネシア人配偶者の在留資格認定証明書交付申請をしました。出入国在留管理局の審査官からは、技能実習先を失踪してからの行動について詳細を記載した書面をお要求しました。要求どおりの内容を上申書にしたためて提出したところ、認定証明書が交付されました。
インドネシア人配偶者は認定証明書を持って、日本国大使館でビザの発給を受け日本に入国し、住民登録をしたうえで、Nさんとインドネシア人配偶者との結婚生活がスタートしました。
- 在留期限を超えて不法残留したお相手との手続き
日本人MさんはSNSで知合ったベトナム人女性と交際していました。Mさんはお相手の人柄に惹かれ結婚を申し込んだところ、ベトナム本国で結婚しているとのことでした。前夫との結婚は破たんしているとのことでしたが、Mさんと結婚するためには、先ず、離婚手続きを済ますことが必要でした。また、お相手ベトナム人は技能実習先を飛び出して、不法残留状態であるとのことでした。Mさんとお相手ベトナム人は話し合いを重ねた結果、お相手ベトナム人が出入国在留管理局に出頭したうえでベトナムに帰国し、離婚の後にMさんと再婚し、配偶者のビザを得て日本に戻ってきてもらうことにしました。
お相手ベトナム人は出入国在留管理局に出頭し、出国する意思を示したため、「出国命令」の処分が下され、上陸拒否期間「1年」となりました。
Mさんは帰国したお相手のもとを何度も訪れ、親族にも挨拶しベトナムで結婚手続きをしました。また、日本での婚姻届けも済ましました。お相手ベトナム人が日本出国をして1年経過したタイミングで、在留資格認定証明書交付申請を行い、無事に認定証明書が交付されたのちにお相手ベトナム人はビザの発給を受けて日本戻ることができました。それから日本での二人の結婚生活がスタートしました。
- 借金などを理由に実習先を疾走した後も日本に在留する者が多い。
- 在留期限前なら本国に帰国させる。
- 実習先を辞めたものに在留期間は更新されない。
- 出国命令の処分なら一年後に日本に戻れる可能性がある。