帰化申請とは
最終更新日:2023年7月22日 行政書士 勝山 兼年
外国人配偶者の日本国籍取得
日本に住んでいる外国人が、外国の国籍を失い、日本国籍を取得することを「帰化」と言います。「帰化」の申請をするためには、ある一定の要件が必要です。外国人配偶者が結婚ビザで日本に在留し、3年が経過すると帰化申請ができます。
永住許可や在留資格などの申請は出入国在留管理局でしたが、帰化の申請をするのは住所を管轄している法務局です。
帰化して日本国籍を取得すると、日本の法令に従い、選挙権、被選挙権を有し、教育、福祉、年金などの行政サービスを日本人と同等の権利で受けることができます。また、就職、結婚などの際に国籍を気にする必要もなくなります。
帰化の要件
簡易帰化(日本人の配偶者等 ) の場合
外国人配偶者の場合は在留外国人(普通帰化)よりも条件が緩和される部分があります。
- 日本人と婚姻後、引き続き3年以上日本に住んでいる。(居住要件)
- 日本人と婚姻後3年を経過し、引き続き1年以上日本に住んでいる。(居住要件)
- これ以外にも、日常生活に支障のない程度の日本語、生活習慣への適応能力(能力要件)
帰化申請のポイント
- 外国人夫婦のうち、一方だけが帰化をする
外国人夫婦の場合、帰化は基本的にご夫婦での申請が望ましいとされています。(以前は認められなかったようです) しかし、それでも夫婦のうちの一方のみが帰化申請をするという理由がはっきりとしたものであれば、認められる場合もあるようです。 面接時に確認されますので、一方だけが行なうという理由をきちんと説明できるように前もってまとめておきましょう。
- 帰化申請の面接で聞かれる事
面接では、帰化の動機、申請書に書かれている内容について確認されます。また、「帰化の動機書」を提出している人は、その動機書を読むこともあります。一般的には生活実態を確認するため、「法務局で面接」⇒「自宅訪問」という流れになっています。ご夫婦の場合、配偶者の方にも面接があります。主に夫婦関係、日常生活に関しての質問が多いようです。法務局に申請書を出す前に、コピーを取っておいて、面接前に確認することをおすすめいたします。
- 家族が揃って申請する場合
ご家族で申請する場合は、生計の整理がポイントの一つとなります。生計は世帯ごとでの確認となりますので、安定した生計を営めるか、今後も維持できるのかどうかをきちんと説明できるよう、前もって整理しておきましょう。
- 非課税者(専業主婦など)の非課税証明書の取り方
市役所などに収入の届出をしていないと課税計算などができないので、証明書を発行してもらうことができません。 納税課などで届出をしてから、非課税証明書を発行してもらいましょう。
- 出生届に父親の名前がなく、認知届がある場合
帰化にあたり重要な事は、ご本人の日本戸籍の作成にあります。両親から受け継ぎ、将来のお子さんへ伝えて末永く続く血縁の証明をつくるとても重要な作業となります。 父親と母親が認知後すぐに結婚していれば、婚姻届出書のみで事足ります。しかし、入籍時期が大きくずれ込んでいる場合には、兄弟姉妹の出生届書が必要になる場合もございます。 これは、父・母・兄弟姉妹の家族関係を整理し、戸籍にどのように反映させるかを検討する材料になります。 この場合では様々な書面で証明していく事になりますので、お気軽にご相談ください。
- 申請中に婚姻し、身分関係に変化が生じた場合
帰化の申請中に婚姻するなどして身分関係に変化が生じたときも、やり直し等にはなりません。 提出済みの書類の差替えや、配偶者に関する書類等、変化した身分関係に関する書類を追加提出することで継続していきます。
- 申請中に現在の在留資格の期限が来る場合
帰化申請と在留資格は別物であるため、帰化申請をしているからといって、在留資格の更新申請をしなくていいというわけにはいきません。 帰化申請に要する期間はだいたい8ヶ月から1年ほどですので、在留期限も考えながら申請のタイミングを図る事をお勧めいたします。
- 台湾籍から中国籍へと国籍を変更している場合、台湾戸籍としての証明書は取得できるのか
このような状況では、一般的に国籍離脱していると判断されるため台湾戸籍関連の証明書は取得できない可能性があります。過去に取得して控えをとっていた場合は、台湾に改めて照会する必要があります。 台湾の戸籍は転居ごとに作成されるため、追いかけることが困難な場合も考えられます。詳細をご両親などに確認して書類の取得を勧めていく事が必要となってきます。
- 取得した証明書の有効期間
帰化申請には多くの証明書が必要となりますが、証明書・書類によって有効な期間は異なってきます。 給与明細書は最新のものが必要となりますし、運転記録証明書は発行後3ヶ月以内のものと定められています。 そのため、こうした有効期間が短く定められている書類は、他のものが揃ってから取得することをお勧めいたします。 また、年度が変わることで差替え指示を受けることもあります(納税証明書、会社の決算書など)
- 事業を経営している場合の、事業関連の証明書などの緩和条件
取締役であっても労働者的側面がある場合(取締役営業部長など)ならば、書類が簡素になることもありえます。
- 帰化の基本的な流れとは、そもそもどういうものか
帰化業務の管轄は法務局であり、その手順は全国的に基本は同じですが、管轄によって細かい箇所が変わってきます。 行政書士に帰化申請を一任していても、
- 初回相談は法務局に出頭して日本語テストを受けなければならない
- 一度に書類の点検を行なわず、段階的に書類を確認する
こうしたルールで帰化申請を行なっている法務局もあるため、地域によっては出頭の回数が通常より多くなる事があります。 その他予約制が採用されている場合等もあるため、事前に管轄の法務局へ手順を確認する事をおすすめいたします。
- 留学から就労に変わった場合
留学生としての経験のみ5年以上であっても帰化申請はできません。留学ビザから就労ビザへ変更し、3年以上在留していないと、居住要件は満たしたことになりません。ただし、10年以上日本に在留している場合は、居所10年として申請することが可能です。
- 履歴書での転居歴の書き方
帰化申請においては、それまでの居住歴を記さなければなりません。しかし幼いころから引越しを繰り返しており、幼年期の住所など記憶が曖昧だという方もいらっしゃると思います。 そうした場合は、基本的に覚えている範囲で転居歴を記していく事となります。 直近の5年間の居住歴の記載された登録原票記載事項証明書が、必要書類に含まれていますので、少なくとも5年間は転居歴も書けるはずです。 申請書類の全般に言える事ですが、不明な点があるからといって、でたらめな内容で書面を埋める事は、審査に悪影響を及ぼすため、おすすめいたしません。
- 内縁関係の人物がいる場合
たとえ婚姻しておらずとも、生計を共にしている場合には内縁関係の人物や婚約者の身分を証明する書類が必要となります。 帰化申請そのものは個人単位での審査ですが、生計に関しては世帯を一単位として考えられます。
- 仕事の都合で長期の海外出張に出ていた場合
一般的な目安として、連続90日、年間の合計150日を目処に海外に出ている場合には日本に居住していないと判断されます。帰化とは、あくまで今後日本に住まうことが条件のため、たとえ長期の海外滞在が業務命令等の会社都合であっても、考慮されない場合があります。 このような場合で帰化をお考えの方は、仕事がひと段落して長期的に日本に住まう状況が整ってからの申請をおすすめいたします。
- プロスポーツ選手など、通常の給与形態と異なる場合
プロスポーツ選手などの場合には、収入の安定が無いという事で、帰化審査において指摘を受ける場合もあります。ただし、決して収入の安定面だけで帰化の可否が判断されるわけでもありません。 スポーツ選手などの場合でも、預貯金や経済基盤がしっかりしていれば許可されるようです。 なお、日本代表やそれに順ずる経歴があれば、そうした面も併せて評価される事もあるため、スポーツ選手等が一概に帰化申請で不利というわけではありません。
- 帰化と永住の違い
永住では国籍は元のままで日本に住む事ができ、帰化ならば日本人として日本に住む事になります。 どちらも半永久的に日本での在住が可能になるという点では共通しているため、日常生活においては大きな差はありません。 しかし、帰化した場合ならば日本国籍となっているため、元の母国へ渡航する際にはビザの取得が必要になったり、永住では日本国籍を持たないために、参政権にも制限がかかるなど、明確な違いも確かに存在しています。
簡易帰化の要件(国籍法6条・7・8条)
いわゆる簡易帰化といわれるもので、以下の要件に該当する場合には上記の普通帰化よりも条件が緩和されます。
- 1の居住要件の緩和(6条)
- 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者。
- 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所もしくは居所を有し、またはその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者。
- 引き続き10年日本に居所を有する者。
- 1と2の 居住要件と能力要件の緩和(7条)
- 日本国民の配偶者である外国人で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する者。
- 日本国民の配偶者である外国人で、婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する者。
- 1.2と4の居住要件・能力要件と生計要件
- 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者。
- 日本国民の養子で引き続き1年以上住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であった者。
- 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有する者。
- 日本で生まれ、かつ、出生のときから国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者。
※上記の簡易帰化の場合でも重国籍防止要件、素行要件、不法団体要件は緩和されません。